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いやあーーーーすっかりショートショートの更新を忘れていました。
今まで毎日書いてたのに。

そんなわけでショートショートです。
今回はちょっとホモ臭がします。ご注意ください。



ss20160819.txt

深夜の警視庁。俺は誰もいない薄暗い喫煙室で煙草を吸っていた。
大きな殺人事件の捜査中だ。仲間たちは日中の仕事に疲れて、慣れない布団で眠っている。なんとなく目が冴えてしまい、静かに時間が流れるのに身を任せ、紫煙を燻らせる。
「眠れないのか?」
降って湧いた声に、ゆっくりと視線をそちらへと向ける。
「……お疲れ様です」
「二人きりなんだから、敬語なんて使うなよ」
上質なスーツに身を包んだ栗山がいた。元、バディ。現在、上司の同期生だ。
栗山は他に誰もいない喫煙室に入ると、小さなテーブルに肘をつき、端正な顔を手のひらに乗せる。「俺にも一本」
「止めたんじゃないのか」
「今は誰もいないから」
「俺がいるじゃないか」
「お前は誰にもしゃべらないよ」
よく分かっている。さすが、と言うべきか、単純に過ごした時間が重なっていたからなのか、こいつは俺の性格をよく分かっていてつけこんでくる。まったく質が悪い。
煙草の箱を軽く振って栗山に差し出す。「サンキュ」煙草を咥えた栗山の口元にライターを出し、先端に火をつけた。元相棒は懐かしむように大きく煙を吸うと、そのままゲフンゲフンと咳をする。
「大丈夫か?」
優しく背中を撫でると、栗山は手振りで「すまん」と応える。「っ、はー……久しぶりすぎて噎せた。昔はよくこんなキツイの吸ってたよなぁ」
しみじみと言うものだから、俺の悪戯心が首をもたげる。「出世したいから煙草止めたんだろ。もう吸うな。身体にも悪い」「俺の身体を気遣ってくれてるのか?」「上司が変わると色々手続きに面倒だからな」「素直じゃないなぁ」
俺は自分の吸っていた、短い煙草をもみ消すと、栗山の手から彼の煙草を奪い取り、口に運ぶ。
「キツイな」「煙草がか?」「それ以外も」
ふぅん、と息を漏らして栗山が俺の顔を覗き込む。――本当に、質が悪い。
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水瀬洸
Posted by水瀬洸

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